2011/11/02(水) パルチャモ峰(6273m)アタック  顔面蒼白  一気にテンドウ(4372m)へ

 

●●●クライミングデータ●●●

テシラプチャ峠AC(5755m)04:42発 → パルチャモ頂上(6273m)09:23着 歩行距離 1.27km
標高差 518m  総上昇量 498m  総下降量  4m  歩行時間4h41m
(※総上昇量と総下降量はナビの数値だがじっとしていても誤差で動く場合が有る、
たぶん総下降量はゼロだと思う。一回も下ってない、よって総上昇量は518mと思います)

パルチャモ頂上(6273m)10:00発 → テンドウ(4372m)17:02着 歩行距離 8.80km
標高差 -1901m  総上昇量 34m  総下降量 1930m  歩行時間7h02m

移動データ

移動データ

いざ出発

朝三時に起こされると、頭痛と吐き気が嘘のように良くなっている。準備するしかない、観念した。
朝食用のお茶漬けも作る気がおこらない、パサンに紅茶をテルモス一本分作ってもらって、行動食を二本食べながら準備をするが、なかなかはかどらない。

オーバーパンツをはいて、冬用の靴を今回初めて履く。
靴の紐を二度三度と結びなおす、なかなかしっくりこない。
スパッツをつける、もたもたしていると「出て来てごらんつけてあげるから」と山ちゃんの声。
テントの外で三人が待っている、悪いと思いながらも動作が進まない。もっと何度も付ける練習をしてくるべきだった。

アイゼンとハーネスを付ける所まで辿り着き、テントからはいずりでた。
パサンからハーネスとアイゼンを付けてもらう、傍から見るとまるで殿様登山だろう。しかし私は精いっぱいなのです。

いざ出発、後で見るとナビの記録が有った4時42分出発だ!!

5時28分









5時28分。エベレストの有る方が明るんできた。

 

5時50分



5時50分。ラマ教には天気予報の暦が有る、それによると今日は雨、確かに当たっている下界は雲に覆われている。しかし山の上は関係ない。

 

 

 

6時19分、標高5930m。二本目のフィックスロープ、体はまだどうにか進んでいる、ユ
マールを付けて安全確保をしながら登って行っている。
先頭をパサンキダ、山ちゃん、私の順番、パサンカーミは私の後ろをしっかりとフォ
ローしていてくれる。
下からチェコの若い夫婦が登ってくるがロープ無しで追い付いてくる。
パサンキダが五本(250m)の固定フィックスロープを設置してくれた。登るスピードが
遅いのはフィックスロープを設置している間、少し待つ余裕が有る、それがちょうどいい。

YouTube パルチャモ峰日誌-1201 37s




7時34分 標高6050m 後200mで頂上、六本目のフィックスロープからは回収しながら
上がって行く。これを六回繰り返したそうだ。途中に小さなクレパスを迂回し、二度
目は飛び越えた。幅30cmくらいのクレパスだが中はえぐれて深い、思いきって飛んだ。

YouTube パルチャモ峰日誌-1202 41s




8時19分 標高6150m、パサンキダとロープを結び二人で登って行く。3~5歩あるい
て、一分休むようなペース。頑張って10歩も登ると2~3分は動けない。時々ツンツン
とロープを引っ張られる、早く登れと催促されるのか、生きているかどうかを確認さ
れるのか。パサンからすれば引きずり上げたい気持ちでいっぱいだろうが、引っ張る
事は絶対にしない、気長に待ってくれる。
なんども、もういい、置いて行って、と喉まで出かかる。脚は痛くないし大丈夫なの
だが、肺がついていかない。酸素が十分に回ってないのがわかる。
ここから頂上まで約100mを、なんと1時間以上もかかっている。

YouTube パルチャモ峰日誌-1203 28s




チェコの夫婦はもう下山している、彼らは若い、チェコは登山の盛んな国だそうだ。

顔面蒼白



頂上に着く直前の写真、まるでろう人形のように顔面蒼白である。
この一時間、なぜかアイスクリームパフェが食べたいと、もうろうとした頭の中で別世界に逃避していたような。
白い雪がかき氷のように美味しそうに見えるのである、なぜそんなことしか頭に浮かばなかったのでしょう。(笑)

 

 

登頂


 

 

9時24分 6257mアタック成功


本当にやっとのおもいで辿り着く、なぜか涙が流れる。
達成感というわけでもない。
やったという感じはまるでない。他の三人はぴんぴんしているのに、自分だけは瀕死状態。本当に三人に助けてもらってここまで来た。
何の涙かはいまだに不明である。



YouTube パルチャモ峰日誌-1204 3m19s





記念写真

やっと笑顔


 

 

 

 

 

少し休んでやっと笑顔が出るようになった。遥か後ろに見える一番高い山がエベレス
トです。
天気が良くてよかった、何よりも運が良かったと後でつくづく思いました。

10時に下山開始、途中から固定してあったフィックスロープを使い一気に懸垂下降を
する、250mをあっという間に駆け下りた、50mが5本の懸垂下降は結構しんどかった
が、半分転げ落ちるように下りた、下に行くほど呼吸が楽になる。一時間ちょっとで
アタックキャンプにたどり着く。
テントはすでに回収され、約200m下のポーター達のテントサイトまで降ろされてあっ
た。そこでお茶をのんで、登山用の装備を片付けトレッキングシューズに履き替え
る。

ダワダモ ダワディキに有難うの言葉をかける

YouTube パルチャモ峰日誌-1205 41s




本来であれば、ここで一泊するはずを次の宿泊地まで行くことにした。初日のトラッ
クを使って一日短縮した分と、アタック予備日を含めて、全部で3日分日程が早く
なった。

ふと見ると、景子さんがいるではないか。あの魔のテシラプチャ峠を越えてきた、た
だものではない、昨夜遅くに着いたようだ。本人は「自分的にはエベレストに登った
のと同じです」と言っていたが、まさにパルチャモ峰に取りついた私も同感でした。

まだテンドウまで降りる途中、何度も難所が有った。

凍りついた雪



凍りついた急坂をアイゼンも付けずにみんな下りていく。足を滑らすと2~300m滑落し岩に激突する。
みんな慎重に一歩一歩下りていく。


 

 

寒そうなモテ




寒そうに手に息をかけているモテ、と思ってよくよく見たら、鼻くそをほじくっている(笑)
しかしモテが休んでいる時、何度も手に息をかけていたのを見た、その晩私の手袋をあげたが次の日は付けている様子は無かった。ちょっと穴のあいた手袋だったけど、
山ちゃんが喜ぶからあげなさいと言ったのであげたが。




午後5時2分 テンドウ(4372m)に到着、実に標高差1901mも一気に下りてきた。朝登り
始めてから11時間43分も行動していた。今回の日程で一番長く歩いた一日だったが、
なぜか余り疲れた気がしない。

夕食の後、ダワダモとダワディキに賃金を支払った、四日間で13,000Rp(\13,000)高
額である。一日当たり\3,250です。27日に下山した若い男のポーターは三日間で
2,100Rpとボーナス400Rpを足して2,500Rp支払っていた。それだけテシラプチャ峠は
難所だという事なのです、ポーターは命がけです。
山下さんが二人に1,000Rpずつボーナスを、私も御礼に500Rpずつを渡した。二人は深
夜1時に帰路について、明日の昼にはナ村まで帰りつくという、本当にスーパーウー
マン達だ。

その日はたぶん9時には寝た。爆睡したと思う。